家族信託(民事信託)について

2019年02月26日

 超高齢化社会が到来し、従来の制度では対応が難しいことが増えています。例えば、認知症者の本人に代わって預貯金や不動産の管理を行う「成年後見人制度」がありますが、財産の使用や運用が「本人の利益のためだけに制限されて」いたり、認知症になってしまった後では、裁判所が後見人の選任を行うために費用と時間がかかります。

 このような状況を改善するものとして今注目を浴びているのが「家族信託(民事信託)制度」です。本人の生前から死後まで、財産管理や資産承継を一貫して実現することができる制度で、「家族の家族による家族のための信託(財産管理)」といわれています。

 本人(委託者)が、金銭や不動産などの財産を信頼できる管理者(受託者)に所有権を移転し、本人が設定した信託目的(例えば、本人が生存中は一定金額を本人または指定した者(受益者)に毎月給付するなど)に従って、受益者のために財産の管理、処分を行う制度です。受託者は財産を自由に処分することはできず、信託目的や委託者の指示に従って管理する義務があります。贈与や相続では、財産が移転してしまった後の処分について制約をつけることはできませんが、家族信託では、財産の使用・収益・処分に制約を付すことができます。

 家族信託は新しい制度であるため、取り扱いが明確になっていない部分が多く残っていますが、自分の死後に、配偶者や障害を持つ子どもなどに長期にわたって一定の金銭を給付する場合や「跡継ぎ」に遺贈する場合や公益的な目的に財産を活用して社会貢献をしたい場合などに活用される例が増えているそうです。

平成30年度第4回法定研修会