相続不動産の登記義務化について

2021年04月30日

 わが国の所有者不明土地の面積は九州本島より大きいと言われています。政府は、所有者がわからない土地に対処するため、①土地や建物の相続を知ってから3年以内の登記の義務化、②相続した不要な土地を国庫に納付できるようにする、③持ち主が不明でも土地を利用できるようにすることを企図し、そのための関連法(改正民法、相続土地国庫帰属法)が令和3年4月21日に成立しました。3年後の令和7年をめどに施行されます。

 わが国の不動産登記制度が、法律行為の事実を確認し公証するというよりも、徴税を主たる目的として整備されてきたことについては以前にも書きましたが、相続された不動産についてのみ登記を義務化することについてはいささか違和感を感じています。不動産を持っているだけでは価値を生みません。活用してこそ価値が生まれます。人々の役に立つのです。登記制度は活用するための基盤となるものです。本来であれば、土地や建物のすべての不動産が登記されなければおかしいと思います。しかし、登記をするためには測量や境界確定のために時間とお金が必要になり、さらに、登録免許税や取得税などの税金がかかります。不動産取引(法律行為)の機会がなければ登記をしないのも仕方がありません。

 明治政府以来、不動産に関する権利の公示制度として、わが国の登記制度は不完全だったようです。登記を信じて不動産取引を行っても保護されないのです。すべての不動産に関する登記を義務化するために、土地測量や登記に関する手続きの見直し、また、これらの手続きに要する費用の見直しを行い、簡易で安価に登記できる制度の確立と不断の見直しを要望したいと思います。

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