滅失登記について

2022年05月31日

 建物を新築した時は、1カ月以内に物的状況を公示する「表題登記」を申請しなければなりません。しかし、登記しなくても罰則がないために登記されていない建物が世の中には存在します。ちなみに、表題登記されていても、建築基準法の要件を満たしていることにはならないそうです。登記官には建築基準法の要件をチェックする権限も義務もないからです。表題登記は人間の生活に例えれば「出生届」のようなものですが、「死亡届」に相当するものが「滅失登記」です。滅失登記も建物の取壊しから1カ月以内にしなければなりません。建物の解体業者から「滅失証明書」をもらって自分で滅失登記をすることができますが、自分でしない場合は、表題登記と同様に司法書士ではなく土地家屋調査士の担当領域になります。滅失登記にも罰則がないため、現状は更地で建物は存在しないのに登記簿には建物が存在することになります。

 最近土地の売買を仲介しました。買主様が家を新築して表題登記をしようとしたら、滅失登記が行われてなかったため、既に取り壊した建物が登記上存在していました。金融機関によっては、建物の滅失登記をしないと融資をしてくれないところもあるようです。滅失した建物が相続されていた場合は、登記上の所有者から取壊しの時までの相続人をたどって、そのうちの一人から滅失登記の申請をしなければなりません。結構大変な作業です。土地家屋調査士に依頼すると数万円の費用を請求されます。

 人間にとっては、「出生届」も「死亡届」も極めて重要な届ですが、建物については「出生」ほど「死亡」は重んじられていないように見受けれます。建物の死亡届もきちんと行わないと迷惑を及ぼすことがあります。

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