マンションの耐震補強工事

2023年01月31日

 全国の分譲マンション686万戸のうち、15%の103万戸が旧耐震基準のマンションです。(2021年国土交通省調べ)阪神大震災では、深刻な被害を被ったマンションの9割が旧耐震基準でした。建築基準法の耐震基準は、1981年6月以降を「新基準」、それ以前を「旧基準」としています。旧基準の建物は「既存不適格建築物」と呼ばれます。

 旧耐震基準で建てられた建物を新耐震基準で耐震性の有無を確認するのが「耐震診断」です。震度6強から7の大地震がくると、旧耐震の建物は倒壊してしまう危険性が非常に高いといわれています。耐震診断は、レベル1~3に分けられています。レベル1では、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の柱や壁の断面積から耐震性を確認します。レベル2では、鉄筋の影響から確認します。レベル3では、保有水平耐力も確認します。

 耐震診断を行った後に、必要な耐震補強工事を行うのが一般的だと思いますが、この工事についてはその目的について注意が必要です。耐震補強工事は「評点1.0以上」を目標に行いますが、「評点」は、耐震性(建物の地震に対する強さ)を数字で表したものです。評点と建物倒壊の関係は次のとおりです。「1.5以上:倒壊しない」、「1.0~1.5未満:一応倒壊しない」、「0.7以上~1.0未満:倒壊する可能性がある」、「0.7未満:倒壊する可能性が高い」。つまり、建築基準法で求められている1.0以上を満たしても「一応倒壊しない」水準で、地震後避難するまでは建物が倒壊しないように時間を稼ぐための強度を求めているだけなのです。命を守るためには必要なことですが、耐震補強工事を行っても、地震がくれば老朽化した建物は倒壊の可能性が高く、そのうえ補強工事を行う場所と行わない場所の区分所有者間の利害調整も難しく、費用対効果を考えると耐震補強工事に二の足を踏むことになります。しかも、多額の費用をかけて工事をしてもマンションの寿命が延びるわけではありません。

 では、建て替えるかとなると、昨今の建築費の高騰や既に容積率の最大限度まで利用して建築をしているため、建て替えによるスペース拡大分の売却を期待できないため、富裕層の多い東京23区以外ではマンションの建て替えが進んでいないようです。

 旧耐震基準で建てられた分譲マンションの大地震に対する安全性は弱く、その対策は区分所有者の権利や資金の面で解決策が見えない状況です。

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