相続土地国庫帰属制度について

2023年11月30日

 令和5年4月27日に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)が施行されました。相続したけれども将来の利用価値が見込めないような土地は、売却しようにも買手を期待できないことがあります。これまでは放置するしかなかったような場合に、国に引き取ってもらうことができる可能性があります。ただし、実現するためにはかなり厳しい「要件」を満たし、「審査手数料」や「負担金」を納める必要があります。

 申請できるのは、相続または遺贈により土地の所有権または共有持分を取得した相続人です。ただし、次のような土地は対象になりません。①建物がある土地、②担保権や用益権が設定されている土地、③通路や他人が使用している土地、④汚染されている土地、⑤境界が明確でない土地等です。農地や森林も対象になります。ケース毎に判断される対象として、①崖がある土地、②残置物がある土地、③地下埋設物がある土地、④紛争のある土地、⑤その他管理に際して費用や労力を要する土地等です。

 上記の要件を満たした場合、申請に際して「審査手数料」として、土地1筆あたり14,000円を納付して法務大臣の審査を受けます。審査には8カ月程度かかるようです。審査に合格した場合は、10年分の管理費用として「負担金」を納めることになります。負担金は、宅地の場合は面積にかかわらず20万円が原則ですが、市街化区域や用途地域が指定されている地域の場合は面積に応じて金額が変わります。後者の例外に相当する場合は、国に引き取ってもらわなくても土地を売買できる可能性があるといえます。田、畑、雑種地、原野の場合も面積にかかわらず20万円です。森林の場合は、面積に応じて計算されます。

 従来からある「相続放棄制度」では、要らない土地だけを手放すことができませんでしたが、相続土地国庫帰属制度でこれが可能になりました。

 

佐賀関

農地2