不動産登記法について

2021年01月31日

 不動産登記は、①不動産課税(徴税)のためと②不動産取引の安全(所有者や権利関係の公示)のために設けられた近代国家の制度といわれています。わが国では、豊臣検地帳、徳川検地帳などにより課税目的のために土地の登録がされてきた歴史がありますが、明治政府になってからも、②の公共インフラとしての側面よりも①の理由による制度の意味合いが濃いものになっていました。戦後の改正後も登記は義務ではなく任意で、登記が効力要件(登記しないと物権変動の効力が発生しない)ではなく、公信力(登記簿の記載を信じた者を保護する)もなく、そもそも、政府による地積(所有者、境界、面積)の確定が行われず、申請者の意思と負担に任せた状態が続いています。権利を第三者に対抗(権利を主張)するために高額の登録免許税や登記手数料を負担する人は多くないはずですが、マンションや戸建て住宅の取得のために、住宅ローンの利用が一般化したことで登記需要が近年大幅に増加しました。

 しかし、最近は不動産を相続しても登記しない人が増えてきました。特に、資産価値の低い地方の土地や建物などを相続した場合は、そうした傾向が顕著のようです。2016年時点でその面積は九州本島を上回る410万㌶あるというデータがあります。所有者不明土地の増加は、税の滞納、ごみの不法投棄や土地開発の支障になるため、政府はこうした土地の活用と増加防止の対策を進めています。

 新聞報道では、法制審議会が相続や住所・氏名を変更してから3年以内に登記をしないと10万円以下の過料を科すという答申をしたそうです。現在でも、建物を新築したり取り壊した場合は、1か月以内にその登記をしないと10万円以下の過料が科されることになっています。それでも登記をしない人はたくさんいるようです。登記をしないと物権変動の効力が発生しないというように、効力要件にしないといけないのではないかと思います。

日経新聞記事210211

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